仕事を探しているんなら、介護の仕事はどうでしょうか。いくつかのポイントを押さえれば長く続けられる仕事だと思います。
長く勤められる介護の職場の前提条件
長く安定して勤められる職場は、以下のような働きやすい職場環境が整っています。
希望の休みがとりやすい
もちろん一定のルールはありますが、基本的に「シフトさえ組めればいいよ」という考えのもと柔軟に対応してくれるところはいいですね。子育て、家族の介護、夫婦の記念日、趣味活動など、仕事の都合であきらめるということが少ないと、仕事も「よし、やってやるか」という気持ちになります。
定時に上がれる、または全体で常に上がる努力をしている
なんだかわからないけど帰りにくい、みたいな雰囲気ってとても無駄ですね。やることやったならとっとと帰りましょう。全員が「定時に上がろう」と意識しているところはダラダラしたり無駄なことをしたりせず、よく考え効率化を図っています。早く帰れれば、仕事の日でもプライベートが充実できます。プライベートが充実すれば仕事も「よし、やってやるか」という気持ちになります。
上がれないときはきちんと時間外手当が支払われる
利用者の急変対応や事故対応、急な職員の欠勤など、どんな仕事にもイレギュラーはつきものです。常に完璧はあり得ません。そういったときは誰かがカバーするわけですが、定時に上がれないときは時間外手当が支払われる。そういった労務管理を上司がしっかり行っている。それができているところであればちょっときつい時でも「よし、やってやるか」という気持ちにもなります。
また、時間外の研修にも手当が支払われることも重要です。介護の職場には法律で定められた研修を行わなければならない義務があります。結構多いですし、それを時間内にすべて開催するのは困難なところが多いでしょう。そういったときにきちんと時間外手当が支払われていれば「よし、やってやるか」という気持ちにもなります。
研修プログラムが整っている
職場に明確な研修体系が構築されていたら、それはラッキーです。目標を立てやすいし、特に未経験の方には安心でしょう。しかし、介護の現場は人手不足が多いですから、まともな研修プログラムなんてとても作ってる暇なんてなく、「課長‼そんなんことより食事介助入ってください‼」というところもあるでしょう。そういうところに来てしまったら最低限新人、未経験の人にやさしいかどうかだけは注意しておきましょう。研修プログラムは今からでも少しずつ作るとして、目の前の新人さんに「私が教えるから安心してね」という気持ちを見せてくれれば、あなたも「よし、やってやるか、よくわかんないけど」とおおらかな気持ちになれるでしょう。
「よし、やってやるか」という気持ちになるかどうか
仕事をする上で「よし、やってやるか」という気持ちになれるかどうかはとても大切です。誰に対して「やってやる」のか。それは利用者でも上司でもライバルでもありません。その対象は常に自分自身です。前提条件がそろい、安心して自分がそれをやることに納得したとき初めて「よし、やってやるか」となるのです。言葉に出してしまうと「なんだ君、上から目線だな」とか「あのねー、介護っていうのはねー、やってやる、じゃなくてさせていただくというのが基本的な…」という指導が入ってしまうかもしれないので気を付けてください。あくまで自分の中で折り合いがついた時の「よし、やってやるか」です。
安定して介護の仕事を続けるためには
「よし、やってやるか」とあなたは介護の仕事を始めました。しかし実際現場に出てみるとその業務量の多さや深さ、突きつけられる無理難題、安定しない人間関係など、予想しなかった出来事に打ちのめされることになるかもしれません。「なんだよ、介護なんてやっぱりただきついだけで低賃金の最悪の仕事じゃないか、ダマされたー!」なんてことになったら悲しいですね。そういったリスクをできる限り回避し、仕事を長く続けるにはいくつかコツがあります。
目的は「お金」にしぼる
あなたが介護の仕事をする目的は何でしょうか。困ってる人の役に立ちたい、地域に貢献したい、自分の理想の介護をしたい、資格を取ってキャリアアップしたい…などいろいろあると思います。しかし、そこはシンプルに「お金のため」にしぼりましょう。なぜならそれ以外にないからです。それ以外のことは、まともな職場なら基本理念や経営方針などに書いてあるでしょう。職場の基本理念や経営方針は職場の目的になるわけですが、あなたにとっては手段でしかありません。職場の基本理念が自分の目的と本当にマッチするならそれはラッキーですが、稀だと思います。大事なのはあなたが疲れないこと。疲れないためには目的をシンプルにすることが大事です。平均賃金には届かないかもしれませんが、今は処遇改善加算もあり、長くやれば介護だってそれなりに稼げます。
人間関係はあくまで手段
介護はチームワークですから、ほかの多くの仕事と同様必然的に人間関係が生まれます。それがあなたにとって心地よいものならラッキーですが、そうじゃない場合もあるでしょう。今は職場にとってはハラスメントへの対応が必須ですから、明らかに理不尽な事柄に対してはタイミングを見計らって「あのちょっと…相談があるんですけど…」と先輩上司に声をかけて相談するとよいでしょう。上司は(なんだこいつ…まさか辞めるなんて言い出すんじゃ…)とビクビクした気持ちを抑えつつ、「お、どした?ちょっと待ってね~…、よし!じゃ、行こうか!」とあなたを別室へ連れていき話を聞いてくれるでしょう。あなたが選んだ職場は働きやすい職場のはずですから、先輩上司もそれなりに対応してくれるはずです。それから状況が改善すれば、一見頼りなさそうな上司ですが、それなりにやってくれた、ということでしょう。
しかし多くの場合は、そこまでじゃないけどなんとなく居心地が悪いみたいなことが多いのではないでしょうか。
介護の職場に限らず、変な人というのはいます。職場という公共の場で自己顕示しようとする、とか、マウントを取ろうとする、とか、あることないこと言って回り、おとしめようとする、とか、人によって態度が変わる、とか、不機嫌で回りをコントロールする、とか、ミスを絶対に認めない、とか、うそをつく、とか。
あなたはそんなことに振り回される必要はないのです。なぜなら、あなたの目的は「お金」ですから。そういった変な人には「へ~、そうなんですね~」とか、「なんか、大変ですね~」とかだけ言って、適当にあしらっておきましょう。間違っても変な約束をしたり、へこへことしたり、個人的にSNSでつながったりしないでください。わざわざ面倒を抱え込む必要はありません。そしてあなたはおそらく多数派であるまともな人と良好な人間関係を築いて快適に仕事をすればいいのです。変な人は上司に任せておきましょう。
知識と技術を身につける
介護は誰でもできる仕事ですが、丸腰ではいけません。人手不足なので間口は広いですが、それに甘んじて何の勉強もしないでいると、認知症の方々にボコボコにされます。「なんだよ、誰でもできるって言ったくせに、全然思い通りにならないじゃないか、ダマされたー!」ということになりかねません。きちんと勉強して、認知症の方への対応とか、ボディメカニクスを理解した効率的な身体介護とか嚥下状態に合わせた安全な食事介助とかを実践しましょう。それがあなたの心と体を守る唯一の近道です。今の内からそれを実践しておけば、私のように無理をして腰を悪くすることはないでしょう。
往々にして、介護の世界の人は勉強しても実践しない人が多すぎるのです。なぜなら、それでも業務が何となく進んでしまい、仕事が終わることが多いからです。でもその背景には嫌な思いをしているお年寄りとか、リスクがあるにもかかわらず運よく当たらなかったとか、無駄にストレスがたまった、とかがあり、あなたを知らず知らずのうちに消耗させてしまいます。あなたはしっかり知識と技術を身に着け、効率的に、楽に仕事をするべきなのです。
認知症はおもしろい
あなたが対応することになる認知症の方はおそらくだいぶ症状の進んだ方になると思います。あなたの元にたどり着くまで、本人と家族は多くの葛藤を抱え、混乱し、悩み、苦しみ、あきらめを繰り返してきました。無理もありません。自分とともに長い年月を過ごしてきた大切な家族が、ある日を境にわけのわからないことを言い出し、当たり前にできていたことができなくなり、不可解な行動をし、徐々にその人らしさを失っていくのですから。認知症と分かっていてもそれを、簡単に「ああそうなんですね」と受け入れるなんて不可能です。感情的にもなるでしょう。しかし、あなたは仕事としてその人と向き合います。あなたが家族になることはできませんが、しっかりと知識と技術を身につけ、客観的視点でその方をとらえることにより、認知症の方が面白く、魅力的に見えてくるでしょう。そうなったらもうこっちのもんです。ちぐはぐな会話をそのまま楽しめばいいのです。
私のいた職場ではとあるAさんという女性の利用者が、Bさんという男性職員を完全に自分の息子だと思い込んでいました。不思議ですよね。1分前に自分が何をしていたかも覚えてないのに、変則勤務でやってくるBさんが自分の息子であるという間違った認識は忘れないんですから。
大勢のいるホールで、
Aさん「ちょっとお‼○○(息子の名前)、あんた、何やってんの!」
やぶから棒に言います。表情険しく機嫌が悪い様子です。もちろんBさんは特に何もしてません。
Bさん「どうしたの、母ちゃん。俺は仕事してるんだよ。おっきい声出して。みんなびっくりしてるよ。」わかっているので落ち着いて諭します。
Aさん「あは…そうなのー。(ほかの職員に対し)皆さん、よろしくお願いします」
あのいつまでたっても私に心配ばっかりかけるうちの息子が、こうして世間様に交じって立派に働いている…。ああ、どうかうちの息子を…と思ってるかどうかはわかりませんが、とにかくその場は収まるわけです。その世界にC先輩が飛び込みます。
Cさん「Aさん、心配しないでください。B君はね、よくやってますよー」と言ったとか、いわないとか。
まあ、もちろんいつもうまくいくわけではありませんが、間違っても認知症の方に理屈で現実を突きつけたり、言うことを聞かせようとしたり、その行動をいい悪いとジャッジしたりしないでください。少なくともそれは無駄です。
例えばここで、
「私は息子じゃありません!大声出してみんな迷惑してるでしょ!やめてください!」などと言ったら
Aさんは(え、あんた○○でしょ?何言ってんの?わけのわからないことを言って。恥ずかしい。)と混乱し、私の息子がおかしくなってしまった、と動揺し、さらに興奮を強めるかもしれません。
まとめ
介護の仕事は認知症の世界を疑似体験することといっても過言ではありません。
あなたが将来認知症にならない、なんて保証はどこにもありませんし、いわば時代の先取りでしょう。子供叱るな来た道じゃ、年寄笑うな行く道じゃ、ですね。そう思えば介護ほど日常の延長線で気楽に働ける仕事はないのではないでしょうか。
介護の仕事は生産性がないとよく言われますが、介護を必要とする方がたくさんあふれている現代において、介護の専門職が要介護状態の方を適切にみることによって、その家族は安心してその生産性の高いであろう仕事をすることができるのではないでしょうか。
知識や技術を高めるということは楽に仕事ができるということ。特にコスパ重視の若者には必須ですね。
学び、実践し、振り返る。これが長く介護の仕事をする近道です。
どうですか皆さん、介護をやってみては。
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